国家神道」は「精神の近代化」を妨げた

天皇現人神」というバカげた「妄想」からなる国家神道は、今日に至るも深刻な後遺症をわが国に残している。さすがに、天皇崇拝者はほとんどいなくなったが、日本人のマインド・コントロールされやすさと妄想に対する抵抗力のなさ、という形でその後遺症が残っているからである。

明治の国家神道は、江戸時代の封建思想からなる「心の蓋」を西欧文明の力でこじ開けて、日本人の「精神の近代化」を図る絶好の機会を今日に至るまで失わせてしまったのである。

日本は明治以降、国家神道に基づく国民統合によって、たしかに物質面や社会制度などの面では近代化に大成功した。しかし、精神面では逆にその国家神道によって近代化に大失敗するという逆説が生じたのである。

むろん「精神の近代化」の失敗は今日に至るも続いている。それが今日の日本人のマインド・コントロールや妄想に対する抵抗力のなさと、それと表裏一体の「編されやすい」国民性に現れているのである。

今日、戦後の日本はマッカーサーGHQによってマインド・コントロールされたものだ、との見解が一部の識者にある。その指摘は正しい。だが、そのマインド・コントロールされやすさは明らかに戦前の国家神道の成果であって、戦後の産物では絶対にない。

ゆえに、戦後日本をもしスターリンマインド・コントロールしていたら、日本は間違いなく第二の北朝鮮となっていたであろう。それはサリン事件でオウム信者が教団を離脱した後、別のカルトに簡単に引きずり込まれてしまうのと同じことなのである。

それに、同じくマインド・コントロールされるのなら、天皇現人神やスターリン主義よリアメリカ民主主義のほうがずっとましだと私は思う。