標準報酬制度と総報酬制

標準報酬制を採用しているのは、健康保険と厚生年金です。加入している人の賃金は千差万別です。個人個人について保険料を計算することはとても複雑で手間がかかります。そこで仮定的な報酬額のランク(等級)を決めます。

これに個々人の報酬額をあてはめて計算します。健康保険は三十九等級あります。標準報酬のランクは最低が月額九万八千円、最高が月額九十八万円です。厚生年金は三十等級です。最低が月額九万八千円、最高が月額六十二万円です。等級数は異なりますが、報酬月額(賃言に対応する標準報酬は、健康保険と厚生年金で変わりありません。

健康保険と厚生年金で、等級の数と最高額が異なるのは、健康保険は払った保険料で給付になんの変化もないのに対し、厚生年金では二階部分として報酬比例部分があるからです。いわゆる貢献原則というもので、保険制度への貢献、つまり保険料を多く払った人には高い給付を行うものです。

この二階部分がなければ、保険料を払う意欲に影響があるかもしれません。ところが、給与が高ければ高いほど際限なく保険料も高くなれば、それを給付に反映しなければなりません。現役の平均給与よりも相当高い年金をもらう人も出てくる可能性があります。これでは若い人が保険料を支払う意欲をなくすかもしれません。

そこで健康保険よりも低い標準報酬月額の上限が定められているのです。健康保険も厚生年金も標準報酬月額の上・下限は、物価上昇率や賃金上昇率を反映して一定年数ごとに見直されます。