潜在能力を実現する自由

創造的な生活を送るためには、「十分なひま」が必要だ。規律正しい生活をしていると、人はなかなか「自己の内なる創造性」を発揮することができない。創造性を発揮するためには、「十分なひま」がいる。そしてこうした自由時間へのニーズから、人々はますますフリーエージェント的な働き方を求めるようになっている。「フリーエージェント」とは、フリーランス、臨時社員、およびミニ起業家の総称である。

アメリカでは現在、フリーエージェント業に就く人々は、労働人口の四人に一人(約三三○○万人)もいるという(ダユエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来』参照)。ピンクによれば、こうした自由度の高い職種が台頭してきた背景には、およそ次のような社会の変化があるという。第一に、生活の安定と引き換えに組織に忠誠を誓うという「従来型の労使関係」が崩れたこと。

第二に、情報技術の発展とともに生産手段が安価となり、起業しやすくなったこと、あるいは仕事の自己管理がしやすくなったこと。第三に、もはや生活の糧を稼ぐことだけが仕事の目的ではなくなったこと、などである。アメリカではこうした社会の変化とともに、自由な働き方が可能になってきた。日本でも同様の現象がみられるが、しかし日本で最近問題になっているのは、組織から自由なフリーターや非正社員の身分が、いかに自由の理想とはかけ離れているか、という負の側面だ。